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山椒魚小屋/引越し/薫製
山椒魚の漁期は6月初旬から7月半ば過ぎまで。星さんはこの期間を檜枝岐村中心街の自宅から6km余り離れた山椒魚小屋で暮らす。
漁期が始まった当日(1989年6月7日)夕方、星さんの奥さんは親戚の人の手を借りて自宅から布団、食器、日用品を山椒魚小屋に運んだ。
この日は午前中に左惣沢、昼からは小沢倉沢にズーを入れ(仕掛け)て小屋に戻ると、1年ぶりに小屋の掃除をし、トイレを作り、周囲の草刈りなどを済ませて、奥さんの到着を待つ。
この日から二人のヤマドマリ(山椒魚小屋に泊まる暮らし)が始まった。
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毎年5月20日頃、ズーを仕掛ける沢の草刈りをする。このとき沢の様子を見て、ズーを入れる時期を想定するが、最終決定は「山の色(青くなる)や木や草の伸びる案配だな」。正面に見える会津駒ヶ岳でも7月に入って山の雪が溶けたらすぐズーを入れる。
舟枝川の5km上流、左岸の左惣沢の出合いに山椒魚小屋は建っている。

山椒魚漁にこの小屋は欠かせない。「水の便、山に近い、煙を出しても苦情がない、サンショウウオをどこに置いてもいいだろ」

小屋の脇を流れるこの左惣沢上流でも山椒魚を捕る。
捕ってきた山椒魚は一晩塩水に浸ける。死なせるため、体の汚れやぬめりをとるため。
「嫌な臭いと串に刺すのはいまでも気持ちがわるい。とても食べたいとは思わない」とふたりは口を揃えて言う。串に刺す台の草の束はイワスゲ。「じいさんの代からこうしてるが、ほかの人たちは藁を使っている」
串に刺した山椒魚を沢の水で丁寧に荒い汚れを取る。
1本の串にはメス10匹、オス10匹、計20匹になるようにする。
小屋の戸を明けっ放しにしていてもイロリの煙は部屋の上方に充満している。「眼が痛いから私は一日中はって歩きますよ」と奥さんが言う。
漁期中は山椒魚小屋から立ち上る煙が絶えない。薪は生乾き状態のサワグルミが使われる。
山椒魚の薫製
イロリの上の薫製棚に吊るされた串刺しの山椒魚。竹串はズーと同じ竹が使われている。

「竹は年数の食った方がいい、腰が強いから」
今年始めての薫製(6月13日の状態)。約500匹が吊るされている。

新しく串刺しにしたものは下段に吊るす。
薫製になった山椒魚。毎年1万5千匹くらい捕り、薫製と冷凍保存で半々にする。
薫製になった山椒魚は家に持ち帰ったあと、玄関の土間に敷いたヨモギの葉の間に入れて柔らかくし、内側にオス10匹、外側にメス10匹を紡錘状にして束ねて製品とする。昔はこれを「ひとったま」と言い「とったま」で「ひとさげ(200匹)」と呼び、ひとさげいくらで取引した。