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小沢倉沢/「ズー(罠)」を仕掛ける
小沢倉沢は山椒魚小屋から2kmほど離れた、舟岐川の上流に位置している。沢の出会いまで続く川沿いの道は川俣までのびていたが、今は砂防ダム建設により遮断されている。
初日の今日は20個のズーを入れるが、気温が暖かくなるとさらに5個上流に入れる。今はまだ上流の山椒魚は冬眠から覚めていないので罠を入れるには早すぎる。ヤモウドガサ(山人ガサ)と呼ぶ植物の葉がじゅうぶん開いたときが、山椒魚漁の一番いいとき。今はまだ少し早い。
小沢倉沢の取り付きは新緑のブナ林、しばらくこの淡い光りの中を進む。沢の出会いから400mほど上流が山椒魚の生息域。針葉樹(「くろき」と呼ぶ)が沢の上流に無いと山椒魚は捕れない。
星さんは自分専用の沢を8本持っている。一番長い沢は約2,000m、短いので約1,000mの長さ。これらの沢の上流1/3に山椒魚が生息している。下流はイワナが棲むため山椒魚はいない。イワナは獰猛で自分と同じ長さの山椒魚を頭から食いつく。
沢の一部は国有林になっている。毎年入林許可をもらう。
小沢倉沢には大きな滝(高さ10−15m)が3本あって、高巻いて登って行く。
小沢倉沢には今シーズン始めて向かう。初日は罠「ズー」を仕掛けるだけで漁はしない。山椒魚小屋から20個のズーを背負い向かった。
ズーを作る材料は、川俣の人はスズタケと言うが、おれはズーダケと言っている。栗山村から切ってくる。檜枝岐では育たないから。作り方は川俣の人に教えてもらった。下流に設置するズーは長さ50cm口径15cm。上流のズーは口径13cmのものを使う。上流は沢水が少なく沢自体小さくなっているからだ。ズーは二つ一組でビニール紐で結わえて持ち運ぶ、昔はブドーの皮、ニレダモの皮を紐にした」
ズーを仕掛ける。山椒魚漁を開始するため罠を仕掛けることを「ズーを入れる」、山椒魚漁を終了し罠を回収することを「ズーを上げる」という。漁期が終わるまでズーは仕掛けたまま、数日おきに中の獲物を取り出しにくる。
枝を添え木にして、そこにズーを固定させる。夜行性の山椒魚が水に流されてズーの中に入ると、水圧に押されて脱出できなくなる。

「おやじに習ったのは15、6歳のとき。沢を3本もらって、たいして教えてくれなかったから自分で工夫した。習ったって特別の方法があるわけではない。沢のことを知らなければだめだから、自分でやっていくしかない」

「沢を知るまで、最初はズーを多く入れてしまうが、できるだけ数を少なくしてたくさん獲るのが一番。沢を見ただけでどの辺にサカナ(山椒魚)がいるかわかる。この辺が一番獲れるということが、5−6年もやればわかる」
滝の落ち口に仕掛けられたズー。
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ズーは250個ほど持っている。ナイロンひもになってから4、5年持つ。皮のものは3年くらいが限度。
檜枝岐には7人の山椒魚捕りがいる。「館岩に2人、湯西川に1人いたが、もうやっていないんじゃないか。川俣はやっていない」
水の近くには、サワグルミ(一番多い)、トチ、カツラが生えている。水からはなれると針葉樹になる。