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左惣沢/山椒魚漁(その2)
左惣沢は山椒魚小屋の脇を流れる沢。星さんが山椒魚を捕る8本の沢のなかで一番長く、約2kmある。
小屋を出てからウオ(山椒魚)を回収して戻ってくるのに3時間かかる。若いときには2時間で終わっていた。沢の距離が伸びたわけでもないので、やっぱり体が衰えてきてるな」
今年の雪解けの頃に歩いた熊の足跡。斜面の登りは爪で引っ掻いて上がっていくから足跡がわかりにくい。下りはかかとで下りてくるから熊だとすぐわかる。 新潟、栃木、群馬にまたがって移動している。
ブナの太い幹に残る熊の爪痕。登って木の実を取った。長い筋は下りのとき、点のような跡は登りのときについた爪痕。「おそらく70−80kgの体重だ」
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ズーが仕掛けてあるところまで30分以上かけて登っていく。そこまではイワナが棲息している。
ブナの実。2−3年に一度、9月頃に実をつける。
熊は自分の穴の近くの木を爪で引っ掻いたり、かじったりして(写真)、自分の存在を示す。これを「アタリ」という。

「沢に入ったとき、熊に遭うこともある。お互いに目をそらしていると、そのうち熊の方がいなくなる」

「一番近距離で15-20mだったことがある。このときは親子の熊だったが、自分が斜面の上だったので、それほど怖くはなかった」
15年ほど前まで使われていた熊を捕る仕掛「くまおそ(おとし)」の残骸。丸太で組んだ高さ60cmくらいの、穴倉のようなもので、中に熊が入ると石を積んだ天井が落ちて、石の重みで動けなくなる。
江戸時代の記録にある「くまおとし」
沢の途中から下流方向を振り返ると、会津駒ケ岳(標高2133m)の稜線が眼に入る。「正面の黒く見える沢がおれの捕っている沢。あそこについている雪が溶けないと捕りにいってもまだだめだ」
ズーの中に枯れ葉が詰まっていると、ズーの中に入り込んだトビケラの幼虫とスナムシ(イワナ釣りの餌にする)に食いつかれて山椒魚は死んでしまう。死んだものを石の上においておくと体がひからびてしまうが、雨が降るとまた戻る。腐りにくい。
晴れの日が続くとウオ(山椒魚)は捕れない。雨の日の方がいい。だからどんなに雨が降っても漁はやるが、3日も4日も雨だと今度は気温が下がりすぎて出てこない。オテントウさま相手だからカリバ(狩り場?)なんだ。晴れた日の夕立くらいが一番いい。(カリバとは当たり外れがある、博打という意味か)」
背のバッグは「皮エジコ(皮エジッコ)」。これは檜の皮製だが、ほんとうはブドウの皮が一番。空気の通りが良く雨にも強い。中に入っているのは途中で摘んだ今夜のおかず、山菜のユキザサ。
木綿手ぬぐいで作った「山椒魚袋」。水の切れが良いから木綿手ぬぐいを使う。「これで約100匹」。袋の膨らみ具合で数がわかる。
冬眠から出てきたばかりの山椒魚は体が黒く硬い。餌を食べ始めると下の腹が白くなり体が柔らかくなる。